
入れ歯を作る目的の一つに、笑ったときに見える歯をきれいにしたいという思いがあります。
健康な歯の人でも、矯正歯科や審美歯科に通い、積極的に歯並びをきれいにする時代です。せっかく作る入れ歯ですから、きれいで自然な歯並びによって若々しさを取り戻さなくてはいけません。歯がないこと、歯並びが悪いことでさんざん悩んできたのですから、審美的にも優れた入れ歯ができてこそ、入れ歯を作った甲斐があるというものです。
ところが、完成した入れ歯が、いかにも「入れ歯です」とわかるようではがっかりですね。真っ白で四角く、びっしりと並んで隙間がなく、無表情の歯。これでは、人前で話したり、笑うのがいやになっても当然でしょう。
入れ歯は、見た目の“自然さ”がとても重要です。不自然な入れ歯は、笑顔ばかりでなく、人相まで変えてしまうからです。
たとえば、上下の歯の咬み合わさる位置が低すぎると、口元がクシャという感じになったり、鼻の下に縦ジワがよってしまいます。せっかく入れ歯を入れたのに、相変わらず口元がすぼまった貧相な顔立ちのままではがっかりです。
逆に、咬み合わせが高すぎたり、前歯に使った人工歯が前すぎると、話したり笑うときに歯や歯ぐきがむき出しになってしまうことがあります(ガムスマイル)。また、口を閉じたときに口の周辺が盛り上がって見えて、やはり不自然です。
ぴったり合った入れ歯を作るときの指標のひとつに、美しく自然な“エステティックライン”と“スマイルライン”があります。
にっこりと笑ったときに、唇の両端が上方に引っ張られるように三日月型のカーブを描いて開き、咬み合わせた白い歯が見えるのが理想のスマイルラインです。米国人が好むのはハリウッドスマイル(ハリウッドの俳優のようなダイナミックなスマイルライン)ですが、日本人の場合は少し控えめなラインにして、日本人らしい優しさを大切にしています。
しかも、美しいスマイルラインから見えた歯が、その人自身の歯のように“表情のある自然な歯”であれば、どんなに素敵な笑顔になるでしょうか。
笑顔に自信が戻れば、よく笑い、よくしゃべるようになります。そうすると、口の周囲の筋肉がよく動いて鍛えられるため、頬や顔の輪郭がキリッと引き締まってきます。重く垂れ下がっていたまぶたがすっきりと上がって目まで大きくなり、瞳が輝いてくる方に何人も出会いました。肌に張りが出てきて、お化粧のノリがよくなったとうれしそうに話してくださる女性もたくさんいます。きれいな口元、若々しい口元によって表情が生き生きとしてくるのは女性も男性も同じです。

合わない入れ歯を長い間使っていたり、歯のない状態で長くいると、口の周囲や頬、あごの筋肉が落ちてたるんでくる、いわゆる“デンチャーフェイス”になってしまいます。このデンチャーフェイスこそ“老人顔”といっていいでしょう。ところが、ぴったり合う入れ歯を入れたとたんに、男らしいキリリとした表情に変わっていく男性も大勢いて、その変貌ぶりには驚かされるばかりです。口元に自信がよみがえることによって、生活や仕事に張りを取り戻し、
人生に対する前向きの自信さえも出てくるからに違いありません。