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「すぐにはずれる入れ歯」に安定剤を塗って使っていませんか?
自分の口の中の型をとって作った入れ歯のはずなのに、どうして、こんなに簡単にはずれてしまうのだろうか、なぜ、すぐに浮いてしまうのだろうかと不思議に感じている方はいませんか。
大きく口を開いたり、笑った拍子にパカッとはずれてしまう入れ歯、強く噛むと、口蓋部分が浮いてしまう入れ歯、あるいは、絶えずカタカタと動いてしまう入れ歯など、はずれかたや不安定な具合はさまざまです。 すぐにはずれる入れ歯には、いくつかの原因があります。

まず大きな原因は、型どりの方法です。通常の入れ歯の作りかたでは、口を大きく開いて型どり用のトレイを入れ、ぐっと押さえ込むように圧迫保持して、印象材が固まるのを待ちます。その間、あごを動かさないようにしてじっとしていなければなりません。上下の総入れ歯をつくる場合には、上、下それぞれの型を取ります。
ところが実際に入れ歯を使うときは、口はじっとしているわけではありません。噛んだり、話したり、笑ったりします。あるいは絶えず唾液を飲み込んでいます。この唾液量は1日に1.0~1.5リットルにもなります。そのたびに口の中の筋肉や粘膜が動きます。そのために、口を開いた状態だけでとった型で作った入れ歯の中には、口の動きに対応できない入れ歯もあるわけです。
少々専門的になりますが、義歯床のいちばん後方部分が接する粘膜は、口を開けたときは伸びますが、口を閉じるとたるみます。この粘膜の変化が要因となり、型のとりかた次第で、義歯床が粘膜にぴったり密着しなくなるのです。

二つ目の原因として、義歯床を製作するときの技術力があります。型を用いて義歯床を作る際に、材料に熱を加えて充填しながら重合や射出成型していきますが、熱による変形が生じることがあるのです。つまり、型通りに義歯床ができ上がらないわけです。
採得した型通りにできなかった義歯床は、微妙な凹凸をもつ口腔粘膜にぴったり吸着できないのは当然です。そのため、前歯部に軽く下の歯が当っただけで後縁の義歯床が浮き上がったり、片側だけで噛むと反対側が浮き上がって、すぐにはずれてしまうのです。
この現象を起こさないためには、歯科技工士に相当の技術力と熟練が求められます。最近では、変形に応じて修正する新しい重合方法(入れ歯のレジンの部分を作ること)も開発されているため、新技術を積極的に導入していく姿勢も必要です。

もう一つの原因は、歯ぐきにかぶせる義歯床が小さすぎる場合です。義歯床には安定するために必要な最小限の大きさがあります。 ところが、患者さんが「口の中が窮屈だ」というと、解剖学的形態を無視して必要以上に義歯床を小さく削ってしまう歯科医師がいるのです。小さくなりすぎた義歯床は歯ぐきの上にちょこんと乗っているだけになり、スケートデンチャーと呼ばれます。これでは安定のしようがなく、すぐにはずれてしまうというわけです。
せっかく作った入れ歯が安定感が悪く、口に合わない入れ歯では、なんとも不本意なことでしょう。このような入れ歯を、薬局やドラッグストアで市販されている入れ歯専用安定剤を使って歯ぐきや口蓋に接着して使っている人がたくさんいます。

現在、入れ歯安定剤の市場は年間売上高73億円ともいわれています(1998年、年間小売店販売金額。ACNielsen調ベ)。合わない入れ歯、はずれやすい入れ歯をしている人がいかに多いかということです。
ところが、安定剤で接着して使っているうちに、入れ歯はますます合わなくなってくる可能性が大きいことも覚えておいてください。なぜなら、本来ならぴたりと吸着しなければならない歯ぐきや口蓋と義歯床の間に、軟らかい安定剤をたっぷりと塗って接着すると、グッと咬み合わせたり、食べ物を噛んだりしているうちに、その圧力の加減によって入れ歯が傾いたり、ズレたりしたまま固定されてしまうからです。
そのまま食事をしたり、話したりしているうちに、咬み合わせはますますズレていきます。入れ歯を支えている顎堤(歯ぐきのドテ)に無理な力がかかるため、顎堤の下の歯槽骨はどんどん減っていき、低くなっていきます。こうなると、義歯床と顎堤との間の空間はさらに大きくなり、安定剤をさらに厚く塗って、使わなければならなくなります。そしてフラビーガムといったコンニャク状の歯肉になってしまうこともあります。
また、入れ歯を何とか安定させようと無意識のうちに歯をくいしばることが多くなるため、やがて顎関節症の引き金にもなりかねません。顎関節症が起こると、うまく噛めない、食べられないという悩みだけでなく、あごの痛み、肩こり、頭痛、目の痛みや自律神経失調症類似の諸症状がつぎつぎと出てくることにもなりかねません。
このような悪循環が、入れ歯安定剤を使っているうちに生じてくる危険性は大変高いのです。安定剤によって機能的咬合平面のズレがますますひどくなる心配もあるのです。

 
 
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